POPcorn

ネタバレなしで作品の良さを伝えます。

ロスト・エモーション

ロスト・エモーション(原題:Equals)を鑑賞しました。

「意図的に感情を喪失した世界、生きやすい」です。

いろいろあって、人類は「感情のせいで社会が狂う」と結論づけ、遺伝子操作で感情を排除し、ボーっとした社会を築き上げたのです。

これといった理由はないですが、彼らの生きざまを見ていて、日本みたいだなあと皮肉に思っていました。

感情をなくした結果、ぼんやりとした統一された意志のようなものがあり、みんなそれに右倣え。すこしでも異議を申し立てると総スカン。

今作では住民全員が白いユニフォームのようなものを着ていますが、日本の社会人が決まって揃いのスーツを着、同じ髪型をし、当然のように乗車率300%の電車に乗り職場へ向かうのと何ら変わりありません。

感情を失った彼らは働くロボット、社会を動かす歯車です。何はともあれ不気味です。

照明が暗めなのか、登場人物たちの瞳孔が開ききっている描写がよくありました。意図的だったのでしょうか。

 

小学校でとある生徒が別の生徒を叩き、叩かれた生徒が泣いてしまったとき、

先生がやってきて叩いた生徒に謝罪を強要し、叩かれた生徒には許しを強要します。

本人たちが全くそんな感情を抱いてないにせよ、形骸化させた儀式で事態を収束させます。

そもそもの問題解決になっていません。

そんな話を、思い出しました。

 

ここが好き
でもそんな中で感情を発症してしまった二人が惹かれあいます。
この世界でたった二人なのかと予想していましたが、感情を発症する方は多いようで、その中の二人に焦点を当てただけです。
本作のおかしな世界観の中で、感情を持った二人の挙動はとても安心感を覚えます。
最初から最後まで淡々とした作品ですが、淡々としたまま終わったのはむしろ好印象です。
 
そして無機質な世界だと思っていたうちのいくつかは安藤忠雄が作った日本の建築だとか。
日本の質実剛健というか、わびさびというか、そんなコンセプトはこういう風に映っているのかもしれません。
土曜の夜に真剣な顔で見たい作品です。
どうぞ。