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ネタバレなしで作品の良さを伝えます。

君の膵臓をたべたい

先日地上波初登場した「君の膵臓をたべたい」を遅すぎるタイミングで鑑賞した。

あまり邦画を好んで観ることがなく、奇を衒ったタイトルと高校生が主人公という時点でなんらかの食べず嫌いを発動し、当時は観ることがなかった。

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底抜けに明るいヒロイン桜良と、桜良に巻き込まれる引っ込み思案で読書好きな「僕」の掛け合いを楽しむ物語である。

「僕」はいわゆる「やれやれ系」の主人公で、地味で引っ込み思案、友達もいないが何故かカーストトップの美少女に見初められ、どたばたに巻き込まれる。

その辺の不自然さはさておき、とりあえず原作を紹介したい。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

おそらく、このアニメのようなキャラ設定は実写化には少々の無理があり、実際の人間が演じてしまうと「え、こんな人いる?」感が否めなくなってしまう。

原作小説はその分、創作物というフィルターをかなり濃いめにかけられるのでアレルギーを発症することなく読むことが出来るのだと思う。

私の交友関係では圧倒的に小説>映画という評価で、映画では泣けなかったが小説は涙が枯れたという知人も。

私はというと映画でもそれなりに泣いた。浜辺美波の演技を受け入れられれば感情移入は難しくない。

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肝は「君の膵臓をたべたい」というセンテンスだ。このセンテンスの持つ意味を物語を通して構築出来るかどうかが最終的なお話の理解度に繋がる。

個人的には起承転結がこれでもかと言うほど体現されている作品だと感じた。

強いて言えば「君の膵臓をたべたい」というセンテンスに「転」の事件があまり絡んでいないことが気がかりだが、大筋はとても理解しやすい展開だ。

特に私はその「転」の部分の意外性に驚かされた。「生きる」ということの意味に切り込む作品は多々あり、私は「最後に登場人物を死なせて涙を誘おう」という展開が基本的に嫌いだ。

一見するとこの作品もその基準に引っかかりそうだが「転」によってその印象は覆された。

最後には病気関係なく「生きる」について考えさせる面白いシナリオだ。

 

柄にもなく気に入ってしまったので小説版も読んだ。

基本の筋は同じだが、映画版では時間軸が「大人になった僕」ではじまる。小説版は高校生の時間軸で完結する。

やはり小説の方が情景描写が細かいので漏れなくストーリーを感じることができる。

そして小説版はこの物語が「ラブストーリーではない」ということを慎重に書いている。

私はその点も気に入った。

 

とにかく食べず嫌い的にこの映画を観ていない方も案外好きな可能性があるので、騙されたと思って観てほしい。

最後に、丁寧に説明されない「膵臓」の機能についてまとめておく。

 

膵臓

主な役割は2つ。

①膵液の分泌。食べ物の消化を助けます。

②ホルモンの分泌 。血糖値をコントロールします。

急性膵炎という病気があります。膵臓が自らの分泌した消化酵素で消化されてしまう病気です。多くはアルコールの多量摂取が原因だと言われています。

小説内では以下のような記述がある。

膵臓は、消化と、エネルギー生産の調整役だ。例えば糖をエネルギーに変えるためにインスリンを作ってる。もし膵臓がないと、人はエネルギーを得られなくて死ぬ。(中略)」

つまり、膵臓を患うことはかなり死に近いという表現がされている。明確な病名は言及されてはいない。

簡単すぎる膵臓まとめだが、以上を念頭に鑑賞をどうぞ。